聞き書き実施担当者の感想のまとめ                
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橋本みゆき / 大学院生(当時) / 残酷なインタビュー
私たちの班はたまたま2人のハルモニの話を聞いた。 2人のハルモニは、ある意味対照的だった。女の子であるという理由で学校に行かせてもらえず、親に決められた結婚をイヤイヤして、戦時中は物質的困難を体験し、苦労の中で懸命に子育てしてきたというストーリーは、かなり共通している。違うのは、現在の自分の意味づけである。
一人は、周囲でも評判の嫁や孫に囲まれた自らの来歴を肯定するに至った。ところが他方は、子供を生きがいに女手一つで育ててきたその子らにいま頼ることができず、八十を過ぎても一人暮らしせざるを得ない家族関係の現実を嘆く。先のハルモニが他方のハルモニとの対照で現在の自分を評価することにより、不遇さがいっそう露わになるという、残酷なコミュニケーションとなった。そこにあるのは、“一世のハルモニ”とひと括りにはできない、それぞれの人生である。
 残酷だと感じたのは、ハルモニたち間の格差だけではない。話の内容を受け止めきれず、適当に流して次の質問に移る聞き手の自分たちの言葉である。そのときは精一杯だったけども、テープ起こししてみて焦った。言葉にするのもつらかったと思われるその個人的な経験は、私たちの問いに応えて話したものである。しかし聞く側に受け止める姿勢がなかったら、せっかく自己を表現し若い世代に伝えようとしたハルモニの語る力に水をかけてしまうかもしれない。
 では、こんな残酷なインタビューはしない方がいいのか。つらい記憶はそれぞれの中にしまっておくのがよいのか。そんなことはないと思う。少なくとも私にとって、歴史の傷跡とそこから派生する生身の人間のいろんな痛みを改めて考えることになった。もっとちゃんと理解したい。このハルモニのために何かできないだろうか。彼女が語りにこめたその力を、今度は私が何らかの形にする番なのだろう。
 
名前 / 肩書き / 題名
矢野泉/大学教員/ハルモニとの再会
白鳥優子/大学院生/お世話になりました
増田みつ枝/社会人大学生・ハングル講師/聞き取りに参加して
中村裕之/高校教員/聞き書き 断章
大越貴子/大学教員人間は人を信じるもの
金子美沙/大学生/集中聞き書き事業に参加して
橋本みゆき/大学院生(当時)/残酷なインタビュー
猿橋順子/大学教員
黒川真理子/大学生/聞き取りを行って
金井美里/大学生
山田泉/大学教員/ハルモニへの聞き書きで感じたこと
青木美江子/おおひん地域在住/実際に生きてきた道、その思いを語る
青木美江子/鋼管通在住/「在日コリアンの生活史の聞き取り」からKさんと話して感じたこと
木下加奈子/団体職員/ハルモニの人生にふれて
柳澤綾乃/大学生/ほんの一言・・・。
☆カン・トッチョルさんへ☆
寺辻英恵/大学生/ハルモニの笑顔が輝いている理由(わけ)
鈴木宏子/ウリハッキョ共同学習者
飯島彩音/学生
石原たみ/学生/過去を語るということ