旅の目的 
 
 在日コリアン一世の生活を支配した一つの象徴としての炭鉱労働。そのことを本当に理解したい。
 炭鉱労働に携わった在日韓国・朝鮮人は、たくさんいる。彼ら/彼女らは、いまや大変なご高齢となり、もうお話を聞けなくなってしまう。仕事をもとめて各地を転々とせざるを得なかった川崎のハルモニ、ハラボヂを理解する原点のひとつが「炭鉱労働」にある。「炭鉱労働」の風景を知るハルモニと一緒に、炭鉱をめぐることは、川崎のハルモニ、ハラボヂの生活史を具体的に確認する作業となる。これが、今回の旅の位置づけのひとつである。
 続いて、下関を知る意味である。下関は、在日一世が、海峡を越え、日本の地を踏んだ出発点である。慶尚南道出身の川崎のハルモニ、ハラボヂのほぼすべてが、下関についた歴史を歩んだ。
 さらに、この街には、戦後帰国する人たちが殺到し、祖国への帰国を待ち望み、実現させようと図った場所でもある。川崎には、「帰らなかった」、「帰れなかった」ハルモニ、ハラボヂが多いなか、私たちは、帰国をめぐる当事者の話を十分に聞く機会がなった。そのことをしっかり実感したいと考えた。今回の旅における「下関」の位置づけは、これらの2点にある。
 もちろん、ハルモニたちにとっての目的は、苦しかった時代を、自分の足で振りかえり、歴史の流れ中で、自分史を捉え直してほしいこと、そして、経験を語りつぐ自覚と誇りを深め、自らの炭鉱労働や帰国体験について、語り継ぐ記憶の再生を図ってほしいと願った。

 

 
在日コリアン一世の炭鉱労働を学ぶ
下関・筑豊フィールドワークの旅
Copyright 2004- 2000人ネットワーク All Rights Reserved